「AIで何ができるか」ではなく、「自分は何に困っているか」から考える。この順番を変えるだけで、AI導入の失敗はかなり減らせます。この記事では、着手前に自分自身(または相談先)に聞くべき3つの質問と、その答えを「時間とお金」で見える化する方法を紹介します。
「AIで何ができるか」から始めると失敗する
AI導入の相談でよくあるのが、「とりあえずChatGPTを契約したけど、何から使えばいいか分からない」という状態です。原因は順番にあります。「AIで何ができるか」を先に調べてしまうと、選択肢が多すぎて決められなくなるのです。
逆に、「自分は今、何にいちばん時間を取られているか」から出発すると、使う場面は自然と1つか2つに絞られます。ここで役立つのが、次の3つの質問です。
質問①:今、いちばん時間を取られている仕事は?
最初の質問はシンプルです。毎日・毎週の仕事の中で、「これがなければもっと楽なのに」と感じる作業を1つ挙げてみてください。見積書の作成でも、メールの返信でも、会議のあとの整理でも構いません。
複数思い浮かぶ場合は、いったんすべて書き出してから、次の質問②③に答えて比較するとよいです。
質問②:それがなくなったら、何が嬉しい?
2つ目の質問は、その作業がなくなった後の状態を具体的に想像することです。「時間ができる」だけでなく、「その時間で何をしたいか」まで考えると、優先度がはっきりします。
- 「お客様対応にもっと集中できる」
- 「毎週日曜の夜に仕事をしなくて済む」
- 「新しいメニュー開発に時間を使える」
この質問への答えが具体的であるほど、AI導入の効果を実感しやすくなります。
質問③:今は誰が、どのくらい時間をかけている?
3つ目は、現状を数字で把握する質問です。正確でなくて構いません。「だいたい週3回、1回30分くらい」のようなおおよそで十分です。
この質問がいちばん重要です。なぜなら、①〜②が「感覚」の話であるのに対し、③だけが「金額に換算できる」情報だからです。
3つの答えを「時間×お金」で見える化する
③で出した時間に、時給の目安をかけると、その作業に毎月いくら使っているかが見えてきます。
| 作業 | 時間の目安 | 時給換算(例:¥1,500) | 月あたり |
|---|---|---|---|
| 見積書作成 | 週3回・1回30分 | 1.5時間/週 | 約¥9,000/月 |
| メール返信 | 毎日20分 | 約2.3時間/週 | 約¥14,000/月 |
| 会議後の整理 | 週2回・1回40分 | 1.3時間/週 | 約¥8,000/月 |
※ 上記は計算方法を示すための例です。実際の金額は業務内容・時給の考え方により異なります。
この表を作ってみると、「なんとなく面倒」だった作業が、「月1万円前後のコストがかかっている作業」として見えてきます。ここまで来ると、AI導入にかける費用と比較しやすくなり、優先順位も自然と決まります。
見える化すると起きる変化
- 「なんとなく」だった困りごとが、比較できる数字になる
- 複数の困りごとがある場合、どれから手をつけるべきかが分かる
- AI導入の相談時に、相手に状況が伝わりやすくなる
自分でできるセルフチェック
相談する前に、次の3行を自分の言葉で埋めてみてください。
① 今いちばん時間を取られている仕事:________
② それがなくなったら嬉しいこと:________
③ 今かけている時間(目安):週__回・1回__分
この3行が埋まれば、相談の準備はほぼ終わりです。あとは、それをそのまま話してもらえれば十分です。
ラタトスクのヒアリングでも同じ質問をします
ラタトスクのAI業務整理・導入パックでは、最初の30分のヒアリングで、まさにこの3つの質問を伺っています。「ざっくりでOK」なので、上のセルフチェックが埋まっていなくても大丈夫です。一緒に整理しながら、優先する1業務を決めていきます。
よくある質問
Q. 困りごとが複数あって、どれから聞けばいいか分かりません
A. 複数あって当然です。それぞれについて3つの質問に答えてみて、「時間×回数」が一番大きいものから優先するのがおすすめです。迷う場合は、相談の場で一緒に整理することもできます。
Q. 時給換算の数字を人に見せるのに抵抗があります
A. 社外に見せる必要はありません。あくまで自分たちの中で優先順位を決めるための目安です。実際の時給ではなく「仮の数字」で計算しても、比較には十分使えます。
Q. 3つの質問に答えられない(時間を計ったことがない)場合はどうすればいいですか?
A. 正確でなくて大丈夫です。「体感でだいたい30分くらい」のようなおおよそで構いません。ヒアリングの中で一緒に思い出しながら整理することもできます。
まとめ
- AI導入は「AIで何ができるか」ではなく「自分は何に困っているか」から考える
- 聞くべき3つの質問:①いちばん時間を取られている仕事は? ②なくなったら何が嬉しい? ③誰が・どのくらい時間をかけている?
- ③の答えに時給をかけると、困りごとを「時間とお金」で見える化できる
- 見える化できれば、優先順位も費用対効果の判断もしやすくなる
3つの質問への答えがまだ曖昧でも大丈夫です。まずは今いちばん面倒に感じている仕事を、そのまま聞かせてください。