「今のホームページはWordPressで作ってあるけれど、毎年けっこうな金額を払っている」「更新の仕方がわからないまま、何年も放置している」。こうしたご相談をいただくことがあります。その選択肢のひとつが、Cloudflare(クラウドフレア)という仕組みへの切り替えです。
ただ、この話には最初に整理しておくべき誤解があります。WordPressの中身をそのままCloudflareへ引っ越すことは、できません。この記事では、実際には何が起きるのか、手順は何か、費用はどう変わるのか、そしてやめたほうがいい人はどんな人かまで、専門用語を使わずに正直に書きます。
1. 結論:「引っ越し」ではなく「作り直して表札を付け替える」
先に結論を言います。「WordPressからCloudflareに移す」と言うとき、実際に行われているのは次の3つです。
- 新しいホームページを、ゼロから作る(Cloudflare上に置ける形で)
- 今のURL(ドメイン)の向き先だけを、新しいホームページに変える
- 元のWordPressは用済みになるので、あとで解約する
たとえるなら、引っ越しではなく「新築して、同じ表札を付け替える」のが実態です。住所(URL)は変わりませんが、建物は新しいものに入れ替わります。
なぜ引っ越しにならないのか。WordPressは、サーバーの中でプログラムを動かして、そのつどページを組み立てる仕組みです。一方Cloudflareは、できあがったページをそのまま配ることに特化しています。土台の仕組みが違うので、中身をそっくり移すということが構造上できません。
ですから「移行しますか?」と聞かれたら、実際の問いは「今のサイトを作り直しますか?」です。ここを取り違えたまま話が進むと、あとで「そのまま移してくれると思っていた」というすれ違いが起きます。
2. そもそもCloudflareとは何か
Cloudflareは、アメリカの会社が提供しているホームページを世界中に配るための仕組みです。もともとは大企業のサイトを高速化・保護するためのサービスとして知られていますが、近年は小さなホームページを置く場所としても使われています。
専門用語を抜きにすると、特徴は3つです。
- 速い ── 世界中に配信拠点があり、見る人にいちばん近い場所からページが届きます
- 止まりにくい ── 1か所のサーバーに頼らないため、障害に強い作りになっています
一方で、WordPressのような「管理画面から自分で記事を書く」機能は標準では付いていません。ただし、必要であればご自身で更新できる仕組みを別途組み込むことも可能です。どこまで自分で更新したいかによって、作り方が変わってきます。
3. WordPressとCloudflare、何がどう違うのか
比較すると、それぞれ得意なことが違うだけで、優劣ではありません。
| 項目 | WordPress | Cloudflare(静的サイト) |
|---|---|---|
| 自分で記事を書けるか | 書ける(管理画面あり) | 標準では書けない(更新の仕組みを別途組み込むことは可能) |
| 表示の速さ | そのつど組み立てるため遅くなりやすい | 速い(できたものを配るだけ) |
| 更新作業 | 本体・プラグインの更新が定期的に必要 | ほぼ不要 |
| 乗っ取り・改ざん | 更新を怠ると狙われやすい | 動くプログラムが少なく、リスクが小さい |
| 問い合わせフォーム | プラグインで簡単に追加できる | 外部サービスの利用など、ひと工夫が必要 |
| 予約・会員機能・通販 | プラグインで実現しやすい | 向いていない |
ざっくり言えば、「自分でどんどん記事を書きたい」ならWordPress、「作ったら基本そのままで、速く・安く・安全に置いておきたい」ならCloudflareという住み分けです。
「WordPress.com」と「WordPress.org」は別物です
ここは混乱しやすいので補足します。同じ「WordPress」でも2種類あります。
- WordPress.com ── 会社が用意したサービスに登録して使う形。サーバーの準備が不要な代わりに、プランの月額・年額がかかります
- WordPress.org ── ソフトを自分でサーバーに設置する形。レンタルサーバー代が別途かかります
どちらを使っているかで、切り替え時の手順と、解約すべき契約が変わります。まずご自身がどちらなのかを確認するところから始めてください。管理画面にログインしたとき、URLに wordpress.com が含まれていればWordPress.comです。
4. 切り替えの手順(6ステップ)
実際の流れはこうなります。作業の大半は制作者側で行いますが、ご本人にしかできない確認が最初にあります。
ステップ1:いま契約しているものを洗い出す
ここがいちばん大事で、いちばん抜けやすい工程です。次の4つを確認します。
- ドメイン(URL)をどこで契約しているか ── WordPress.com経由か、別の会社(お名前.com・ムームードメイン・Google Domainsなど)か
- WordPressの管理画面にログインできるか ── IDとパスワードが分からないと、切り替え作業が止まります
- 契約しているプランと更新日 ── 直前に自動更新されると1年分が無駄になります
- そのドメインでメールを使っているか ── 次の「6.」で詳しく説明します。ここを飛ばすと事故になります
ステップ2:新しいホームページを作る
今のサイトの内容をもとに、新しく作ります。この間、今のホームページは今までどおり表示されたままです。制作中にサイトが見られなくなることはありません。
ステップ3:切り替える前に、仮のURLで完成形を確認する
いきなり本番のURLを切り替えるのではなく、まず一時的なURLで表示して、実物を確認します。ここで修正を出し切ります。この工程を省く制作者もいますが、飛ばすべきではありません。
ステップ4:ドメインの向き先を変える(切り替え当日)
ここが「表札の付け替え」にあたる作業です。技術的には、ドメインの設定を、新しいホームページのある場所へ向け直します。作業自体は数分ですが、世界中に反映されるまで数時間から最大2日ほどかかることがあります。
この間、見る人によって「新しいサイトが見える人」と「まだ古いサイトが見える人」が混在します。異常ではありません。切り替えは、アクセスの少ない時間帯に行うのが安全です。
ステップ5:表示とメールを確認する
切り替え後、次を確認します。
- パソコン・スマートフォンの両方で正しく表示されるか
- 鍵マーク(https)が付いているか ── 切り替え直後は証明書の発行待ちで、一時的に警告が出ることがあります
- 問い合わせフォームから実際に送信して、メールが届くか
- これまで使っていたメールが、送受信できるか
ステップ6:問題がないと確認できてから、古い契約を解約する
ここを焦らないでください。切り替えた直後に元の契約を解約してしまうと、何か問題が起きたときに戻す先がなくなります。数日〜数週間ようすを見て、問題がないと確認できてから解約するのが安全です。
順番を守るだけで、失敗のほとんどは防げます。「作る → 仮URLで確認 → 切り替え → 動作確認 → それから解約」。この順番を崩さないことです。
5. 費用はどう変わるのか
金額はご契約内容によって変わるため、ご自身の請求額を確認していただくのが確実です。ここでは「何がなくなり、何が残るか」の考え方だけ整理します。
| 費用 | 切り替え後 |
|---|---|
| WordPressのプラン料金 | 不要になる可能性があります(サイト用のプランのみ契約している場合) |
| レンタルサーバー代(WordPress.orgの場合) | 不要になる可能性があります |
| ドメインの更新料 | 引き続き必要です(URLを持ち続けるための費用のため) |
| 独自ドメインのメール利用料 | 使っている場合は引き続き必要です |
| 有料テーマ・有料プラグイン | 使わなくなるため不要ですが、返金はされないことが一般的です |
注意していただきたいのは、「ドメイン代」と「サイトを置く場所の代金」は別のお金だという点です。サイトを作り直しても、URLを持ち続ける費用はなくなりません。ここを混同すると「全部タダになると思っていた」というすれ違いが起きます。
6. いちばん怖いのは「メールが止まること」
切り替えで実際に起きるトラブルのうち、影響がいちばん大きいのがこれです。
ホームページのURLと同じドメインでメールアドレスを使っている場合(例:info@自社のドメイン)、ドメインの設定を触ったときに、メールの設定まで一緒に消えてしまうことがあります。ホームページは1〜2日止まっても取り返せますが、メールが届かなかった期間の問い合わせは、二度と戻ってきません。
防ぐ方法は単純です。
- 切り替え前に、いまのメール設定を控えておく(専門的には「MXレコード」と呼ばれる設定です)
- ドメインの向き先を変えるときに、その設定をそのまま引き継ぐ
- 切り替え後、実際に自分宛てにメールを送って届くか確かめる
制作を依頼する際は、「メールが止まらないように、今の設定を引き継いでもらえますか」と一言確認してください。これを聞かれて説明できない相手には、任せないほうが安全です。
なお、ホームページのURLとメールのドメインがそもそも別という場合もあります(例:サイトは example-abc.com、メールは exampleabc.com)。その場合、サイト側のドメインを触ってもメールには影響しません。まず「同じドメインか、別か」を確かめるところから始めてください。
7. 検索順位は落ちないのか
正直に言うと、「絶対に落ちない」と保証できる人はいません。ただし、URLを変えずに中身だけ作り直す場合、影響は比較的小さく抑えられます。次の点に気をつけていれば、大きく崩れることはあまりありません。
- URLをそのまま使う ── これが最大の防御です。URL自体が変わると、これまでの評価は引き継がれにくくなります
- 今あるページのURLをなくさない ── どうしても構成を変える場合は、古いURLから新しいURLへ自動で転送する設定(301リダイレクト)を入れます
- ページのタイトルと説明文を引き継ぐ ── 検索結果に出る文言です
- 文章を減らしすぎない ── 見た目を整えるために本文を削ると、評価が下がることがあります
逆に、新しいURLを取得して作り直す場合は、検索での評価はほぼゼロからのスタートになります。すでに検索から人が来ているサイトなら、URLは変えないほうが無難です。
8. 向いている人・向いていない人
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。全員におすすめできる方法ではありません。
向いている場合
- ホームページを会社案内・サービス紹介として置いておきたい(頻繁には更新しない)
- WordPressの更新作業が負担になっている、または放置してしまっている
- 表示が遅い、スマートフォンで崩れる
- 維持費を下げたい
- 更新は頼んでしまってかまわない(もちろん、自分で更新したい場合はその仕組みも相談できます)
向いていない場合
- 自分でブログを頻繁に更新したい ── 管理画面から自由に書きたいなら、WordPressを続けるほうが合っている場合があります(更新できる仕組みを組み込むご相談も可能です)
- 予約システム・会員機能・通販を動かしている ── プラグインで実現している機能は、そのままでは移せません
- すでに大量の記事があり、検索から多くの人が来ている ── 移すリスクに見合わないことがあります
- 今のWordPressに特に不満がない ── 動いているものを触る必要はありません
「困っていないなら、変えなくていい」というのが正直なところです。切り替えは目的ではなく、困りごとを解決する手段のひとつにすぎません。
9. よくある質問
Q. 切り替えている間、ホームページは見られなくなりますか?
いいえ。新しいホームページを作っている間も、今のホームページはそのまま表示されます。切り替え当日も、見る人によって新旧どちらかが表示される状態が数時間〜2日ほど続くだけで、「何も表示されない」時間は基本的に発生しません。
Q. WordPressの記事を、そのまま新しいサイトに持っていけますか?
文章や画像は移せますが、自動ではありません。記事数が多い場合は、その作業に相応の手間がかかります。何本の記事を残すのかは、事前に決めておいてください。
Q. 切り替えたあと、自分で文章を直せますか?
標準では、更新は制作者への依頼になります。ご自身で更新したい場合は、その仕組みを別途組み込むことも可能ですので、事前にご相談ください。「自分で更新したかったのに、できなくなった」というのは、後から発覚すると困る種類のすれ違いなので、最初にはっきり決めておくのがおすすめです。
Q. WordPressの契約は、いつ解約すればいいですか?
新しいホームページが正しく表示され、メールも問題ないと確認できてからにしてください。切り替えと同時に解約するのは避けたほうが安全です。また、自動更新の日付が近い場合は、その前に切り替えを終えられるか逆算しておくと無駄がありません。
Q. Cloudflareのアカウントは、自分で作る必要がありますか?
制作者側で用意する形であれば、不要なことが多いです。ただし「その環境が誰のものになるのか」は必ず確認してください。ドメイン(URL)については、誰が費用を負担し、誰の名義になるのかを確認してください。ご自身で費用を負担するなら名義もご自身にすべきですし、制作者が負担する形なら、解約時にどうなるかを先に決めておくことが大切です。
Q. ラタトスクではどう対応していますか?
ラタトスクのホームページ制作は、Cloudflareでの公開・管理を前提としています。料金は初期制作費0円+月額¥5,000(税込)、または買い切り¥50,000(税込)です。月額¥5,000にサイト公開・サーバー管理・保守と公開後の修正(月2回まで)を含み、公開月から発生して公開後に請求します。
今お使いのURLをそのまま使う切り替え作業についても、通常の範囲であれば追加料金はいただきません。月額プラン(サブスク)の解約時はサイトの公開を停止しますが、ご希望に応じて権利と制作データを移転する手続き(権利者変更)も可能です。移転条件と料金は事前にお見積もりします。
なお、ご自身で頻繁に記事を更新したい場合は、WordPressを続けられることをおすすめします。合わない方に無理にすすめることはしません。
まとめ
- 「WordPressからCloudflareへ移す」の実態は、作り直してURLの向き先を変えること
- 手順は「契約の確認 → 制作 → 仮URLで確認 → 切り替え → 動作確認 → それから解約」
- いちばん怖いのはメールが止まること。同じドメインでメールを使っていないか、最初に確認する
- URLを変えなければ、検索への影響は比較的小さく抑えられる
- 自分で頻繁に更新したいなら、WordPressのままがよい。困っていないなら、変える必要はない
判断に迷われる場合は、今の契約状況をお聞かせいただければ、「切り替えたほうがいいのか、そのままがいいのか」からお答えします。切り替えない結論になることもあります。