ホームページのリニューアルや不具合の調査を制作会社に頼むとき、「今のWordPressの中を見せてください」と言われることがあります。このとき、ご自身が使っているIDとパスワードをそのまま教える必要はありません。
正しいやり方は、制作会社の担当者だけが使う「専用の管理者ユーザー」を1つ作って渡すことです。作業が終わったら、そのユーザーを削除すればアクセス権は完全になくなります。ご自身のパスワードは最初から最後まで、誰にも知られません。
この記事では、その手順を画面を見ながら迷わず進められる粒度で書きます。所要時間はだいたい3分です。うまくいかないときのつまずきポイントと、作業後に削除する方法まで含めています。
1. 自分のパスワードを教えてはいけない4つの理由
「面倒だから、いつも使っているIDとパスワードを送ってしまおう」と考えたくなるかもしれません。ですが、次の4つの理由でおすすめできません。
- 誰が何をしたのか、記録が残らない ── 同じIDを2人で使うと、変更の履歴がすべて同じ名前で残ります。「これは自分の操作か、相手の操作か」が後から判別できません
- 作業が終わっても、権限を外せない ── アクセスをやめてもらうには、ご自身のパスワードを変更するしかありません。変更すれば、ご自身のログインもやり直しになります
- パスワードを使い回していると被害が広がる ── 同じパスワードを他のサービスでも使っている場合、影響がWordPressの外まで及びます
- メールやチャットに残り続ける ── 送信した履歴は相手側にも残ります。誰かの端末が乗っ取られたとき、そこから漏れます
専用ユーザーを作る方法なら、この4つがすべて解消します。手間は3分、リスクはほぼゼロ。やらない理由がありません。
2. 手順:管理者ユーザーを追加する(3分)
ステップ1:WordPressの管理画面にログインする
ブラウザのアドレス欄に、ご自身のホームページのURLのうしろに /wp-admin/ を付けて開きます。
- ホームページが
https://example.comなら →https://example.com/wp-admin/
ログイン画面が出たら、いつものIDとパスワードで入ります。すでにログイン済みの場合は、そのまま管理画面が開きます。
このURLで開かない場合は、セキュリティのためにログイン用のアドレスが変更されている可能性があります。→ 5. つまずいたときは
ステップ2:「ユーザー」→「新規ユーザーを追加」を開く
管理画面の左側のメニューを下のほうまで見ていくと、「ユーザー」という項目があります。人のかたちのアイコンが付いています。
「ユーザー」にマウスを乗せる(スマートフォンならタップする)と、その下に小さなメニューが開きます。その中の「新規ユーザーを追加」をクリックします。WordPressのバージョンによっては「新規追加」と表示されます。同じものです。
ステップ3:入力欄をうめる
入力画面が開きます。上から順に、次のように入れてください。「必須」と書かれていない欄は、空のままで問題ありません。
| 入力欄 | 入れるもの |
|---|---|
| ユーザー名(必須) | 制作会社の担当者用とわかる名前。半角英数字で。例:seisaku / ratatoskr※ユーザー名は、あとから変更できません |
| メールアドレス(必須) | 制作会社の担当者のメールアドレス。ご自身のものではありません |
| 名 / 姓 | 空欄でかまいません |
| サイト | 空欄でかまいません |
| 言語 | 「サイトデフォルト」のままでかまいません |
| パスワード | そのまま触らないでください。自動で作られた複雑な文字列が入っているか、「パスワードを生成」ボタンが出ています。どちらでもかまいません |
| ユーザーに通知を送信 | 必ずチェックを入れてください。これで、担当者宛に案内メールが届きます |
| 権限グループ | 「管理者」を選びます(初期値は「購読者」になっています。必ず変更してください) |
ここでいちばん大事なのが、「ユーザーに通知を送信」にチェックを入れることです。チェックを入れておくと、担当者は自分でパスワードを設定できます。パスワードをメールやチャットで送る作業そのものが、いらなくなります。
ステップ4:「新規ユーザーを追加」ボタンを押す
画面のいちばん下にある「新規ユーザーを追加」という青いボタンを押します。これで完了です。
画面の上に「新規ユーザーを作成しました」という表示が出て、ユーザー一覧に追加されていれば成功です。担当者のメールアドレス宛に、WordPressから案内メールが自動で送られます。
ここまでで、やったことの確認
- ご自身のパスワードは、一度も入力していない
- 担当者用のユーザーが1つ増えただけ
- 担当者は、届いたメールから自分でパスワードを決める
- 作業が終わったら、そのユーザーを削除すればアクセス権はなくなる
3. なぜ「編集者」ではなく「管理者」が必要なのか
権限グループの選択肢には「管理者」以外にも、「編集者」「投稿者」「寄稿者」「購読者」があります。「なるべく弱い権限にしたい」と考えるのは自然なことです。
ただし、リニューアルや不具合の調査を頼む場合は「管理者」が必要です。理由は、次のものが「編集者」では見えないからです。
- テーマ(サイトの見た目を決めている部品)が何を使っているか
- プラグイン(追加機能)が何本入っていて、どれが動いているか
- バックアップが取れているか、取る手段があるか
- 設定(サイトのURL、パーマリンク、メールの送信設定など)
これらが見えないと、「今のサイトが何でできているのか」がわからないまま作業することになり、危険です。プラグインの組み合わせを知らずに触ると、予約機能や問い合わせフォームが止まることがあります。
「編集者」で足りる場合もあります
正直に書くと、権限を絞ってよい場合もあります。
- ブログ記事の文章を書いてもらうだけ → 「編集者」で足ります
- 記事を書くが、公開は自分で判断したい → 「寄稿者」で足ります
頼む内容が「文章だけ」なら、管理者にする必要はありません。相手から「管理者で」と言われたときは、何のために必要かを一度聞いてみてください。答えられない相手なら、そこで立ち止まったほうが安全です。
4. 渡す前に確認しておくと安全なこと
ユーザーを作る前後で、次の3つを確認しておくと安心です。
① バックアップがあるか
誰かが中を触る前に、今の状態を丸ごと保存しておくのが基本です。ご自身で取れない場合は、「バックアップを取ってから作業してほしい」と伝えれば、制作側で対応します。これを言うだけで、最悪の事態はほぼ防げます。
② レンタルサーバーの管理画面は、まだ渡さなくていい
WordPressの管理者ユーザーと、レンタルサーバー(ロリポップ、エックスサーバーなど)の契約アカウントは別物です。中身を見てもらうだけなら、WordPressのユーザーだけで足ります。
サーバーの契約情報は、実際にドメインやサーバーの設定を変える段階になってからで十分です。先に全部渡す必要はありません。
③ 契約の自動更新日を確認しておく
リニューアルを予定している場合、今のサーバーやドメインの自動更新日を調べておくと無駄がありません。「あと2週間で1年分が自動更新される」と後から気づくと、支払わなくてよかった費用が発生します。契約時のメールか、サーバーの管理画面で確認できます。
5. つまずいたときは(よくある5つ)
「新規ユーザーを追加」が見当たらない
ご自身のアカウントが「管理者」ではない可能性があります。ユーザーを追加できるのは管理者だけです。左メニューに「ユーザー」自体が出ていない場合も同じ理由です。サイトを作った人に、ご自身を管理者にしてもらってください。
/wp-admin/ でログイン画面が出ない
不正ログインを防ぐために、ログイン用のアドレスが別のものに変更されていることがあります(セキュリティ用のプラグインでよく行われます)。この場合は、サイトを作った人に「管理画面のURL」を聞くのが確実です。むやみに探すと、ロックがかかることがあります。
担当者にメールが届かない
次の順に確認してください。
- 迷惑メールフォルダに入っていないか(いちばん多い原因です)
- 入力したメールアドレスに間違いがないか(ユーザー一覧で確認できます)
- それでも届かない場合、サーバー側でメールを送れない設定になっていることがあります
3番の場合は、ユーザー一覧から対象ユーザーの「編集」を開き、「新しいパスワードを設定」でパスワードを作って、いったん担当者に伝える方法に切り替えます。この場合は、担当者に「ログインしたらすぐパスワードを変更してください」と伝えてください。
二段階認証(2要素認証)が入っている
ログイン時にスマートフォンの確認コードを求めるプラグインが入っている場合、新しいユーザーも設定が必要です。初回ログイン時に担当者側で設定できることがほとんどですが、うまくいかない場合はプラグイン名を伝えてください。
特定の場所からしかログインできない設定になっている
会社や店舗のインターネット回線からしか管理画面に入れない設定(IP制限)がかかっていることがあります。この場合、ユーザーを作っても担当者はログインできません。「ログイン画面すら開かない」と言われたら、この可能性を疑ってください。制限の解除はサーバー側の設定になるため、契約されている会社への確認が必要です。
6. 作業が終わったら:ユーザーを削除する
制作が終わったら、渡したユーザーを削除します。ここには、知らないとサイトの記事が消えてしまう落とし穴が1つあります。
- 管理画面の「ユーザー」→「ユーザー一覧」を開く
- 削除したいユーザーの名前にマウスを乗せると、下に「削除」が出るのでクリック
- 確認画面が出ます。ここで 「すべての投稿を次のユーザーに割り当てる」を必ず選んで、ご自身の名前を指定してください
- 「削除を実行」を押す
【重要】3番で「すべての投稿を削除」を選ぶと、そのユーザーが書いた記事がすべて消えます。制作中に記事を追加してもらった場合、それが丸ごとなくなります。必ず「割り当てる」のほうを選んでください。
削除すると、そのユーザーではログインできなくなります。これでアクセス権は完全になくなります。ご自身のIDやパスワードを変更する必要はありません。
7. そのまま送れる文面(コピーして使えます)
制作会社から「管理者ユーザーをください」と言われたとき、逆にご自身から必要な情報を聞いておくと、やりとりが1往復で済みます。次の文面をそのままお使いください。
制作会社へ送る文面(例)
- WordPressの管理者ユーザーを作成します。次の2点をお知らせください。
- ① 登録するメールアドレス(WordPressから案内メールが届きます)
- ② 希望するユーザー名(半角英数字。指定がなければこちらで決めます)
- パスワードは、届いたメールからそちらで設定してください。当方からはお送りしません。
- また、作業前にバックアップを取得いただけますでしょうか。
この文面を送れる時点で、「わかっている依頼主」として扱われます。雑な対応をされにくくなる、という実用的な効果もあります。
8. よくある質問
Q. 制作会社を信用していないみたいで、言い出しにくいのですが
気にする必要はありません。専用ユーザーを作るのは、きちんとした制作会社なら「そのほうが助かる」と言う方法です。相手にとっても、誰が何をしたかの記録が分かれているほうが、後で「壊したのはそちらでは」という話になりにくいからです。信用の問題ではなく、お互いを守る手続きです。
Q. 作ったユーザーは、作業が終わるまで消さないほうがいいですか?
はい。公開後の確認が終わるまでは残しておいてください。公開直後は表示の崩れや設定漏れが見つかることがあり、そのたびに作り直すのは手間です。1〜2週間ほど様子を見て、落ち着いてから削除するのがおすすめです。
Q. 複数の会社に見積もりを取っています。全社に管理者ユーザーを渡すべきですか?
いいえ。見積もりの段階では、管理者ユーザーは不要です。サイトのURLを見てもらえば、外から分かることでおおよその見積もりは出せます。管理者ユーザーを渡すのは、依頼先を決めてからで十分です。見積もり段階で管理者権限を求められた場合は、その理由を確認してください。
Q. WordPress以外(Wix、ジンドゥー、STUDIOなど)の場合はどうなりますか?
サービスによって呼び方は違いますが、考え方は同じです。多くのサービスに「メンバーを招待する」「共同編集者を追加する」といった機能があります。ご自身のログイン情報を渡すのではなく、招待機能を探してください。見つからない場合は、そのサービス名をお伝えいただければ調べます。
Q. ラタトスクに頼む場合も、この方法ですか?
はい。お客様のIDとパスワードをお預かりすることはありません。専用の管理者ユーザーを1つ発行していただき、作業が終わったら削除していただく形をお願いしています。作業前のバックアップも、こちらで取得してから着手します。
まとめ
- 自分のIDとパスワードは渡さない。専用の管理者ユーザーを1つ作って渡す
- 手順は「ユーザー」→「新規ユーザーを追加」→ メールアドレスと権限グループ(管理者)を設定 → 追加
- 「ユーザーに通知を送信」に必ずチェック。パスワードを送る作業そのものがなくなる
- 文章を書いてもらうだけなら「編集者」で足りる。管理者が必要な理由は聞いていい
- 作業前にバックアップ。サーバーの契約情報は、必要になってからで十分
- 削除時は「すべての投稿を次のユーザーに割り当てる」を必ず選ぶ(記事が消えるのを防ぐ)
手順のどこかで止まってしまった場合は、画面の状態をそのままお伝えいただければ、次にどこを押せばいいかをご案内します。操作を代行することもできますが、ご自身で作っていただくほうが、あとで削除するときにも迷いません。